古市久美子建築設計事務所FuruichiKumiko&Associates

子どもたちと遊びつつ山に登り海に潜り、建築のことを考えてます。

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[Renovation]北鎌倉の戸建リノベーション

北鎌倉の戸建リノベーション  

 

東京から鎌倉への移住を検討し、コロナ期にいよいよ築50年の中古木造戸建を買ったので改装したいという施主のお話でした。

この頃、みな大なり小なり移住について考え始めていて、実際移動した方、留まっている方様々ですが、 共通するのは、「ここに暮らす」ことについて今まで当ててなかった視点で考え直してみているということかもしれない。  

 

さて春先にリノベ 前の現場にいってみると、家の中が大変寒い。よくあることだが外より寒い。 南西に大窓があり日が当たる場所は暖かいが日陰は寒い。 エアコンをつけても寒い。

床が非常に冷たいゆえであることがすぐ認識され(分厚い靴下かスリッパなしにはすぐにお腹が痛くなるほど)、床下を覗いてみると当然というか断熱はない。サッシはアルミシングルガラスで冷たい。

サーモカメラで測ると部屋全体の温熱が水風呂のように下半分冷たくて上半分だけエアコンの温度になっている。

 

家の内装は元の建主の方が丁寧に住まわれており素材も無垢の物が多くこのまま使えそうなものが多くまた施主も気に入っていることから、中の雰囲気はそのままに建物の性能(温熱と構造)を上げることにコストを使う方針とする。

 

温熱シュミレーションソフトを使って断熱改良前と後の室温・体感温度の変化をグラフで共有しつつ予算配分を決めていく。初期コストの予算・ランニングコストとのバランスを考えて次世代省エネ基準等級4を上回る程度を目安とする方針とする。

また、構造に関しても簡易計算の時点で評点0.6以下で構造の補強も必要/構造設計を入れようという認識で共有する。 基礎と1階壁・天井を補強し、評点1.0を目標の(現実としては0.9くらい)方針で計算する。

 

特にリビングダイニングは床材や壁の板材を極力既存を残そうとしたので、床に関しては部分的に穴を開けて基礎を補強しウレタン断熱材をふき、壁に関しても板材を部分的に外してセルロースファイバーを吹き込んだ。サッシは足場の不要な1階と2階の南窓は断熱樹脂窓AW330とリビングは断熱木製サッシに交換、足場の必要な2階は、足場コスト節約のために樹脂内窓と真空ガラス交換のみとした。

 

この既存を残しながら建物の性能を上げるというのが施工的には難しく、その上蟻害も大きくあったりで工務店の監督さん、大工さん、断熱やさん、職人さんの力が大きく、その都度相談しながら進めた。

  内装に関しては古民家建具を古道具屋で購入して建具屋さんに加工してもらいはめてみたり、梁を一部あらわしにしたり、ディテールで工夫を積み重ねもしているが基本的にはいえの雰囲気に忠実に改良した。断熱補強構造補強ともになるべく既存を壊さずに施工する部分もあり。(これがまたかなり高レベルな大工さん頼りの仕事である・・。)

庭は元々非常に手入れの行き届いた庭であり、よく吟味された植栽計画で窓配置もそれに伴っている。リビングの南角の3箇所の大窓だけでも木製サッシに交換し、また腰高収納をベンチに加工して庭との境界である窓辺が楽しい空間になっている。

家の歴史がそのまま受け継がれていくようで新築にはない良さが空間のあちこちに出て居心地の良さを生んでいる。その上、温熱的には冬の底冷えがなく、夏も涼しく快適に暮らせるという家になった。

 

性能の改善前後の比較グラフ:

外皮平均熱貫流率「UA値」(W/m²K) →外皮の断熱性(熱の逃げにくさ)

冷房期の平均日射熱取得率「ηAC値」 →冷房効率(冷房期における日射熱による影響)

光熱費は少なくとも7~8万円程度/年は下がるという試算

 

 

施工:堀井工務店 現場監督:宇野純 / 中村哲也社長

断熱施工:セルロースファイバーマツナガ

古建具:桜花園

構造設計監理:sora構造設計事務所 金子裕

設計監理:古市久美子建築設計事務所 

 

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